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4.研究内容
阿部大樹
■研究内容
私は今、保健室を来室する児童・生徒のバイタルサインの情報から緊急度・重症度を判断できるのか、といったテーマで研究をしています。
具体的に言うと、体調不良で保健室を訪れた児童・生徒のバイタルサイン(心拍数など)を測定し、それを小児救急で使われている緊急度・重症度判断ツールに当てはめて判断するというものです。現在は、北九州市立八幡病院で使われているPEWSを参考にしています(PEWS: Pediatric Early Warning Score)。
特別支援学校に赴任してすぐに、てんかんの重積発作で、何分たってもてんかん発作が止まらず、救急搬送になった児童がいました。今でも怖かったのを覚えていますし、養護教諭の先生たちの努力を身に染みて感じた瞬間でもありました。私自身、看護師経験はありましたが、小児科や救急科での勤務経験がなく、自分の状態をうまく伝えられない児童・生徒の緊急度や重症度判断に自信がありませんでした。その怖さを克服し、小児の正しい見立てについて勉強しようと思い、東京都立小児総合医療センター小児救急科(当時)にいらした井上信明医師の下で勉強させていただき、小児救急医学会にも誘っていただきました。そこで小児の見立ては“バイタルサインを丁寧にみること”であることを学びました。
今まで学校の保健室を来室した児童・生徒のバイタルサインをテーマとした研究がなかったので、小児科医の力を借りて現在も研究しています。
これまでの結果を、緊急度判定システム(JTAS、日本臨床救急医学会)に当てはめてみると、体調不良時は、体温よりも脈拍数が異常値を示している割合が多いことがわかりました。また体温に関しては、脈拍数異常後に高値になることが多いこともわかりました。これらの結果は、小児救急医学会で北九州市立八幡病院の神薗淳司医師が発表されていた内容と近い結果となりました。
今後の方向性
引き続き、小児救急医と連携を図り、定期的に学会で発表していき、可能であれば論文にすることが今の目標です。医療従事者がいなくても少ない項目で確実に救急度・重症度が判断できるようになることで、子どもにとって安全な環境になってほしいと考えています。また、子どもに関わる方が医療面に対する負担感を減らし、他の業務に時間を使えるようになることにも期待しています。
成果については、現段階では、学校の保健室でもパルスオキシメーターや橈骨動脈など脈拍数に基づく判断が有効であるのではないかと考えています。軽症なうちに気づくことで、学校での救急外来・救急搬送者の減少や保健室での回復、感染拡大防止に期待ができます。
参考として、文献リストを示します。
・第30回日本小児救急医学会学術集会(学会誌)、2016
・小児看護3(雑誌)、へるす出版、2016
・緊張度判定システムJTAS2017ガイドブック(日本臨床救急医学会)、へるす出版、2017
・子どもの急変予知をバイタルサインとその測定値から紐解く 〜小児早期警戒スコアリング・システム〜
https://yahatapednet.files.wordpress.com/2017/09/e5b08fe58590e697a9e69c9fe8ada6e5918ae382b9e382b3e382a2e383aae383b3e382b0e383bbe382b7e382b9e38386e383a0.pdf
阿部 大樹
阿部大樹(あべ だいき)
2018年11月10日
©2018 Abe Daiki